「そろそろ公共工事に挑戦したい」「道路工事や公共施設の仕事を受注してみたい」——そんなお考えをお持ちの建設業者さまは多いのではないでしょうか。
しかし、いざ調べ始めると「経審」「経営状況分析」「電子証明書」など、聞き慣れない言葉が次々と出てきて、どこから手をつければよいのか迷ってしまうケースが少なくありません。
このページでは、東京都の公共工事の入札に参加できるようになるまでに必要な9つのステップを、建設業の知識がまったくない方にもわかるよう、順を追って解説します。埼玉県での入札を検討されている方にとっても、手続きの流れはほぼ共通ですので、ぜひ参考にしてください。
まずは、9つのステップを大きな流れで確認してみましょう。
公共工事を直接請け負うために必ず必要な許可です。
会社の財務内容を専門機関に分析してもらい、Y点を算出します。
毎事業年度終了後4か月以内に提出が必要な届出です。
公共工事の入札に参加するための必須手続きです。
総合評定値(P点)が記載された通知書を受け取ります。
東京都の電子調達システムにログインするために必要です。
オンラインで申請し、審査を受けます。
審査に通過すると名簿に名前が載ります。
いよいよ入札案件に挑戦できます。
建設業の許可を取得する
公共工事を発注者(国・都道府県・市区町村など)から直接請け負うには、まず建設業の許可を取得していることが前提となります。建設業の許可は、建設業法に基づいて都道府県知事または国土交通大臣が与えるもので、請け負う工事の金額や営業区域によって種類が異なります。
建設業の許可を取得していない状態では、後述する経営事項審査(経審)を受けることはできません。つまり、建設業許可の取得はすべての手続きの出発点です。
なお、建設業許可には「一般建設業許可」と「特定建設業許可」の区分があり、発注者から直接請け負った工事を下請けに出す金額の合計が一定額(4,500万円以上(建築工事業は7,000万円以上))となる場合は、特定建設業許可が必要になります。詳しくは別記事で解説します。
参照:建設業法第3条、第26条の2(許可の区分・要件)/国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」
民間の登録経営状況分析機関へ経営状況分析を申請する(Y点の取得)
建設業の許可を取得し、最初の決算を迎えたら、次は「経営状況分析」という手続きに進みます。これは、会社の財務内容(貸借対照表や損益計算書など)をもとに、一定の計算式で「経営状況評点(Y点)」を算出するためのものです。
注意が重要な点は、この分析を行うのは都庁や県庁などの行政機関ではなく、国土交通大臣の登録を受けた民間の「登録経営状況分析機関」です。現在、全国に10社が登録されており、どの機関に申請しても算出される点数(Y点)は同一の計算式が使われます。
後述する経営事項審査の「総合評定値(P点)」を構成する5つの評価項目のひとつです。P点の算出式は「0.25×(X1)+0.15×(X2)+0.20×(Y)+0.25×(Z)+0.15×(W)」で、Y点はP点全体の20%を占めます。会社の財務的な健全性を反映する重要な指標です。
分析を申請するには、経営状況分析申請書と、建設業法の財務諸表(貸借対照表・損益計算書・完成工事原価報告書・株主資本等変動計算書・注記表)、ならびに減価償却の実施額がわかる書類などを提出します。申請は電子申請と郵送申請の両方に対応している機関があります。
分析が完了すると、機関から「経営状況分析結果通知書」が発行されます。この通知書に記載されたY点は、次のステップである経営事項審査で使用します。
参照:建設業法第27条の23第2項、第27条の26/国土交通省「登録経営状況分析機関一覧」(令和7年1月現在)
許可行政庁へ決算変更届を提出する
建設業者には、毎事業年度(決算)が終了したあと4か月以内に、許可を受けた行政庁(東京都知事許可の場合は東京都)へ「決算変更届(事業年度終了届)」を提出することが義務づけられています。
この届出には、工事経歴書や財務諸表(建設業専用の様式)などが含まれます。この書類が提出されていないと、次のステップである経営事項審査を受けることができません。また、更新申請の際にも必要となる重要な書類です。
なお、決算変更届と経営状況分析の申請(STEP 2)は、決算後に並行して進めることが一般的です。両者を効率よく処理することで、経営事項審査までのスケジュールを短縮できます。
参照:建設業法第11条(届出の義務)、建設業法施行規則第5条
経営事項審査(経審)を受ける
経営事項審査(通称「経審(ケイシン)」)とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない審査手続きです(建設業法第27条の23)。経審を受けていない状態では、どれだけ実績があっても公共工事の入札に参加することはできません。
審査は、許可行政庁(東京都の場合は東京都庁)に申請します。STEP 2で取得した「経営状況分析結果通知書(Y点)」をはじめ、工事経歴書、財務諸表、技術職員名簿など多数の書類を準備して提出します。
経審は大きく次の5つの評価軸から構成されています。
X1(完成工事高)、X2(自己資本額・平均利益額)、Y(経営状況)、Z(技術職員数・工事種類別技術職員数)、W(その他の審査項目:社会保険加入状況・建設業の経理状況・研究開発の状況等)
東京都では経審の申請が予約制になっており、繁忙期には予約が1か月以上先になるケースもあります。また、申請から通知書の発送まで一定の処理期間がかかります。有効期限(審査基準日から1年7か月)を切らさないよう、スケジュールに十分な余裕を持って準備することが重要です。
参照:建設業法第27条の23(経営事項審査の義務)、建設業法施行規則第18条の2
経営規模等評価結果通知書を取得する(P点の取得)
経営事項審査が完了すると、審査機関(許可行政庁)から「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」が送付されます。この通知書に記載されている「総合評定値(P点)」こそが、入札参加資格の申請において等級(ランク)を決定する基礎となる数値です。
P点が高いほど上位の等級(A・B・C・D等)に格付けされ、より大きな規模の公共工事の入札に参加できるようになります。逆に、実績が少ない創業間もない会社では最初は低い等級からのスタートになりますが、それ自体は問題ではなく、同じランクの企業どうしで公平に競争できる仕組みになっています。
P = 0.25×X1 + 0.15×X2 + 0.20×Y + 0.25×Z + 0.15×W
STEP 2で取得したY点は、このP点全体の20%に相当します。
なお、この通知書を受け取ることができて初めて、次のSTEP 7の入札参加資格申請に進むことができます。
参照:建設業法第27条の29(総合評定値の通知)、建設業法施行規則第18条の17
電子証明書とICカードリーダーを取得する
東京都の入札参加資格申請は、「東京都電子調達システム」を利用したオンライン申請です。このシステムにログインするには、入札専用の電子証明書(ICカード)とICカードリーダーが事前に必要となります。
電子証明書は、インターネット上で会社の本人確認をするための電子的な身分証明書のようなものです。ビックカメラやアマゾンで購入できるものではなく、「電子入札コアシステム対応の民間認証局」と呼ばれる国が指定した民間の認証機関から購入する必要があります。
電子証明書を受け取った後は、ICカードリーダーをパソコンに接続し、専用ソフトのインストールや東京都電子調達システム用のパソコン環境設定(信頼済みサイトへの登録など)も必要です。これらの設定が完了して初めて、電子申請が可能な状態になります。
なお、取得した電子証明書は入札参加資格申請のみならず、その後の実際の入札(入札書の提出)の際にも継続して使用します。有効期限内は大切に保管してください。
参照:東京都電子調達システム「入札参加資格申請について」/東京電子自治体共同運営サービス(市区町村共同申請の場合)
東京都電子調達システムから入札参加資格を申請する
STEP 5までの手続きがすべて完了し、電子証明書とパソコン環境の設定が整ったら、いよいよ入札参加資格審査申請の段階です。
東京都の公共工事の入札参加資格申請は、「東京都電子調達システム」(https://www.e-procurement.metro.tokyo.lg.jp/)からオンラインで行います。申請にあたっては、入札に参加したい工事の「業種(営業種目)」を正確に選択する必要があります。
東京都の定期受付は2年に一度実施されます。定期受付の期間外でも「随時受付」があるため、時期を問わず申請することは可能ですが、入札参加の時期や有効期限を考慮したうえでタイミングを検討することが重要です。
なお、埼玉県内の市区町村の工事にも参加したい場合は、埼玉県の「電子調達システム」または「市町村電子入札システム」から別途申請が必要です。手続きの基本的な流れは東京都と共通ですが、各自治体により細部が異なります。
参照:地方自治法第234条(競争入札等)/東京都財務局「建設工事等競争入札参加資格審査申請の手引き」
有資格者名簿に登載される
申請内容の審査が完了し承認されると、「競争入札参加有資格者名簿」に会社の情報が登載されます。この名簿は、東京都電子調達システムの「入札情報サービス」から誰でも閲覧可能な公開情報です。
名簿には、工事の業種ごとに等級(A・B・C・D等)が設定されており、この等級が入札に参加できる工事の規模(発注予定金額の範囲)を決定します。
名簿に登載されたとしても、等級が「無格付(X)」となっている場合、東京都が積極的に入札指名を行わないとされており、実質的に入札に参加できない状況になります。申請の際に工事実績を正確に入力することが重要です。過去の工事実績がある場合は、「再審査申請」の制度を利用して等級を変更できる場合もあります。
参照:地方自治法施行令第167条の5(競争入札参加資格)/東京都財務局「競争入札参加有資格者名簿」
東京都の公共工事の入札に参加する
名簿に登載されると、いよいよ東京都が発注する公共工事の入札案件に参加できる状態になります。入札情報は東京都電子調達システムの「入札情報サービス」で公表されており、自社の等級・業種に合致した案件を確認して参加申し込みを行います。
実際の入札(入札書の提出)は、STEP 6で取得した電子証明書を使い、オンライン上で行います。落札後は契約手続き、工事の施工へと進みます。
公共工事は一度関係ができると、その後も継続的な受注につながる可能性があります。はじめはDランクやCランクからのスタートであっても、実績を積み重ねることで徐々に等級が上がり、より大型の案件にチャレンジできるようになります。
参照:公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)第3条・第4条/東京都電子調達システム「入札情報サービス」
■ 全体のスケジュール感について
建設業許可の取得から公共工事の入札に参加できるようになるまで、最低でも半年程度の期間がかかるとされています。特に、経営事項審査の予約が混み合う時期は1か月以上待つケースもあるほか、電子証明書の発行にも1か月程度かかることがあります。
| 手続き | おおよその所要期間 |
|---|---|
| 1. 建設業許可の取得 | 申請から許可まで30~45日程度(標準処理期間)※大臣許可だと90日~120日程度 |
| 2. 経営状況分析(Y点) | 申請から通知書受取まで数日〜2週間程度(機関による) |
| 3. 決算変更届 | 決算後4か月以内(義務) |
| 4・5. 経営事項審査〜P点取得 | 予約から通知書受取まで1〜2か月程度 |
| 6. 電子証明書の取得 | 申請から受取まで1か月程度 |
| 7. 入札参加資格申請〜名簿登載 | 審査期間は数週間〜1か月程度 |
手続きは複数同時に進められるものもありますが、順番が前後できないステップも多く、全体の流れを把握したうえで計画的に動くことが成功の鍵です。
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