令和8年3月9日から技人国ビザ審査が変わった!派遣形態の新ルールと不許可事例を解説

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令和8年(2026年)3月9日より、在留資格「技術・人文知識・国際業務」(通称:技人国ビザ)において、派遣形態で就労する外国人に関する審査の取扱いが新たに明示されました。出入国在留管理庁が同年2月24日に公表した指針に基づき、同日以降の申請分から運用が変わっています。

外国人を派遣社員として受け入れている企業、または派遣会社(派遣元)の担当者の方は、これまでの申請と異なる書類や手続きが必要になる場合があります。申請時点で派遣先が決まっていなければ許可されないケースも明確に示されており、採用計画や申請スケジュールの見直しが必要になる企業も出てくるでしょう。

この記事では、変更の具体的な内容・追加書類・よくある不許可事例と許可事例を、出入国在留管理庁の公表資料をもとに丁寧に解説します。

この記事でわかること
1. 令和8年3月9日から変わった審査取扱いの4つのポイント
2. 派遣形態の申請で新たに必要になった提出書類の一覧
3. 実際に不許可になった事例(3件)と許可になった事例(3件)
4. 外国人本人が知っておくべき注意点

参照:出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」(令和8年2月24日掲載)https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/gijinkoku.html

■ 1. 技術・人文知識・国際業務(技人国)とはどんな在留資格か

技人国ビザは、日本の公的機関または民間企業との契約に基づき、専門的な知識や技術を必要とする業務に従事するための就労系在留資格です。就労ビザのなかでも最も申請件数が多く、外国人材採用において中心的な位置を占めています。

対象となる業務は、大きく次の3分野に分類されます。

分類 対象となる知識・業務の例
技術(自然科学系) 理学・工学・情報処理に関する業務。システムエンジニア、プログラマー、機械設計等
人文知識(人文科学系) 法律・経済・社会学等に基づく業務。経理・財務、総合職、マーケティング、コンサルタント等
国際業務(文化系専門) 外国文化に基づく思考・感受性を要する業務。翻訳・通訳、語学指導、広報・宣伝、服飾デザイン、海外取引等
重要:単純労働への従事は認められていません
この在留資格では、工場でのライン作業・一般的な接客・清掃・荷物運搬など、専門知識を必要としない業務に従事することは認められていません。業務実態が単純労働であれば、書面上の業務名にかかわらず不許可・取消しの対象になります。

参照:出入国在留管理庁「在留資格の明確化等について」(最終改定令和6年2月)・出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)別表第一の二

■ 2. 許可されるための3つの基準

技人国の申請が許可されるには、次の3つの要件すべてを満たしていることが必要です。

1業務該当性:従事する業務が技術・人文知識・国際業務のいずれかに該当すること

申請人が従事する業務の内容が、自然科学・人文科学の知識を必要とするものであること、または外国の文化に基づく思考・感受性を必要とするものであることが求められます。業務内容は在留期間中の活動全体として判断されます。

2学歴・実務経験要件:業務と専攻が関連していること

次のいずれかを満たしていることが必要です。

  • 従事する業務に必要な知識に関連する科目を専攻して大学を卒業(日本・海外問わず)
  • 日本の専修学校の専門課程を修了し「専門士」の称号を取得(専攻と業務内容の関連性が必要)
  • 10年以上の実務経験(国際業務は3年以上。大学在学中の専攻期間も通算可)
  • 情報処理分野では、法務大臣が告示する資格・試験合格により学歴・実務要件が免除される場合あり
3報酬要件:日本人と同等額以上の報酬を受けること

同種業務に従事する日本人の給与と同等以上の報酬が必要です。外国人であることを理由に報酬を低く設定することは認められません。

参照:出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号)・出入国在留管理庁「留学生の在留資格変更許可のガイドライン」(平成27年2月策定、同年3月改訂)

■ 3. 令和8年3月9日から変わった「派遣形態」の審査取扱い

出入国在留管理庁は令和8年(2026年)2月24日、「申請人が派遣形態で就労する場合の取扱いについて」を公表しました。令和8年3月9日(月)申請分からこの運用が適用されています。

派遣形態での就労は、実際にどこで何をするかが見えにくく、在留資格の範囲を超えた業務(資格外業務)への従事リスクが以前から指摘されていました。今回の整理により、派遣元・派遣先の双方に対して明確な責任と書類提出が求められるようになっています。

変更点 1:申請時点で派遣先が確定していなければ不許可

在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請のいずれについても、申請時点で派遣先が特定されていることが必要です。「後から決まる予定」「候補先が複数ある」という状況では、許可を受けることができません。採用計画の段階から、派遣先との契約を先行して確定させることが求められます。

変更点 2:在留期間は派遣契約の期間に応じて決定

派遣形態で就労する場合、許可される在留期間は派遣契約の期間をもとに判断される運用となります。長期の在留期間を希望する場合は、派遣契約の更新見込みやプロジェクト期間、契約更新条項などを書面で明確にしておくことが重要です。

変更点 3:出入国在留管理局が派遣先へ直接確認を行う場合がある

審査の過程で、出入国在留管理局(入管)が派遣会社(派遣元)だけでなく、派遣先に対しても直接、業務内容や活動状況を確認する場合があります。派遣先においても、担当窓口の設置や提出書類との整合性確保が求められます。

変更点 4:派遣元・派遣先の双方から誓約書と契約書の提出が必要

各申請の種別ごとに、派遣元(所属機関)と派遣先の双方から一定の書類提出が義務付けられます。詳細は次の「4.」で整理します。

参照:出入国在留管理庁「申請人が派遣形態で就労する場合の取扱いについて」(令和8年2月24日掲載、PDF 1.7MB)https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/gijinkoku.html

■ 4. 派遣形態の申請で新たに必要になる提出書類

申請の種別によって求められる書類が異なります。以下の通り整理してください。

在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請(新規・変更)
提出が必要な書類(派遣形態の場合)
  1. 申請人の派遣労働に関する誓約書(入管庁の参考様式あり)
    ・所属機関(派遣元)用
    ・派遣先用
  2. 申請人の派遣先での活動内容および派遣契約期間を明らかにする書類の写し
    ・労働条件通知書(または雇用契約書)
    ・労働者派遣個別契約書
在留期間更新許可申請
提出が必要な書類(派遣形態の場合)
  1. 申請人の派遣労働に関する誓約書(参考様式あり)
    ・所属機関(派遣元)用
    ・派遣先用
  2. 申請人の派遣先での活動内容および派遣契約期間を明らかにする書類の写し
    ・労働条件通知書(または雇用契約書)
    ・労働者派遣個別契約書
    ・派遣元管理台帳
    ・派遣先管理台帳
    ・就業状況報告書

更新申請では認定・変更申請よりも提出書類が多く、派遣元管理台帳・派遣先管理台帳・就業状況報告書が加わります。これらは労働者派遣法上の管理書類であり、適切に整備・保管されていることが前提となります。

誓約書に記載される主な誓約内容

入管庁の参考様式による誓約書には、派遣元・派遣先それぞれに対して主に以下の内容が求められます。

誓約の主体 主な誓約内容
派遣元(所属機関) ・申請書類の内容が事実に基づくこと
・申請人および派遣先に対し、在留資格の活動範囲と申請内容を説明し理解させていること
・入管が行う書類提出指導・事情聴取・実地調査等に応じること
・派遣先が変更された場合も、同様の対応を行うこと
派遣先 ・在留資格の活動範囲と申請内容を理解し、申請人を当該活動に従事させること
・入管が行う調査(書類提出・事情聴取・実地調査等)に応じること
派遣先企業の担当者へ
「受け入れるだけ」では足りません。派遣先は在留資格の活動範囲を正しく理解し、申請された業務内容でのみ従事させる義務があります。入管から直接確認が入った場合に対応できる担当窓口と資料の整備が必要です。

参照:出入国在留管理庁「申請人が派遣形態で就労する場合の取扱いについて」(令和8年2月24日掲載)・労働者派遣法(昭和60年法律第88号)第37条、第42条

■ 5. 実際に不許可となった事例(3件)

出入国在留管理庁が公表しているガイドラインや公式資料には、不許可となった具体的な事例が収録されています。以下は、同庁の公式資料に基づく代表的な3件です。

不許可事例1:学部の専攻と業務に関連性がなかったケース

教育学部を卒業した申請人が、弁当の製造・販売業を行う企業と契約し、弁当加工工場での箱詰め作業に従事する業務内容として申請しました。審査の結果、箱詰め作業は人文科学の分野に属する知識を必要とする業務とは認められず、技術・人文知識・国際業務のいずれにも該当しないとして不許可となりました。

参照:出入国在留管理庁「留学生の在留資格変更許可のガイドライン」(公式資料収録事例)

不許可事例2:派遣先の業務が接客販売だったケース

申請書類には専門的な業務内容が記載されていましたが、審査の過程で入管が派遣先に確認したところ、派遣先は小売店であり、申請人を接客販売業務に従事させると説明しました。接客販売は技術・人文知識・国際業務のいずれにも該当しないとして不許可となりました。

参照:出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務の在留資格の明確化等について」(令和6年改定版、公式資料収録事例)

不許可事例3:日本人の同等職種と比べて報酬が低かったケース

工学部を卒業した申請人が、コンピューター関連サービス会社との契約に基づき、月額13万5千円の報酬でエンジニア業務に従事するとして申請しました。審査の結果、同時期に採用され同種業務に従事する日本人新卒の報酬が月額18万円であることが判明し、報酬が日本人と同等額以上であるとは認められないとして不許可となりました。

参照:出入国在留管理庁「留学生の在留資格変更許可のガイドライン」(平成27年2月策定、同年3月改訂、公式資料収録事例)

不許可に多い3つのパターン
1. 業務内容が単純労働(専門知識を必要としない作業)である
2. 専攻・職歴と実際の業務に明確な関連性がない
3. 日本人の同種業務従事者と比べて報酬が低い
■ 6. 実際に許可された事例(3件)

同じく出入国在留管理庁の公式資料・ガイドラインに基づく許可事例です。許可に至るためにどのような点が評価されたかを確認することで、申請の準備に役立てることができます。

許可事例1:コンピューターサイエンスの学位を活かしてエンジニアとして就職

海外の工業大学でコンピューターサイエンスを専攻し学位を取得した申請人が、日本の自動車メーカーのコンピューターエンジニアとして採用されました。専攻分野と業務内容の関連性が明確であり、報酬も日本人と同等以上であることが確認されたため、在留資格の変更許可が認められました。

参照:出入国在留管理庁・法務省「技術・人文知識・国際業務」関連資料(ガイドライン掲載の許可事例に基づく)

許可事例2:経営学専攻者が貿易会社の海外業務担当として就職

大学で経営学を専攻して卒業した申請人が、貿易業務・海外業務を行う企業と契約し、海外取引業務に従事する内容で申請しました。経営学の専攻と貿易・海外取引業務の関連性が認められ、報酬も日本人従事者と同等以上であったことから、許可となりました。

参照:出入国在留管理庁「留学生の在留資格変更許可のガイドライン」(公式資料収録事例に基づく)

許可事例3:日本の専門学校(情報系)を卒業し、ITエンジニアとして採用

日本の専修学校の情報処理系専門課程を修了し「専門士」の称号を付与された申請人が、ソフトウェア開発会社でシステムエンジニアとして採用されました。専攻した情報処理の知識と業務内容の関連性が明確であり、報酬も適切であることが確認されたため、許可となりました。

参照:出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務の在留資格の明確化等について」(令和6年改定版、公式資料収録事例に基づく)

参照:出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務の在留資格の明確化等について」(最終改定令和6年2月)https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html

■ 7. 企業の担当者が今すぐ確認すべき実務チェックポイント

令和8年3月9日以降の申請を控えている、または既に派遣形態で技人国ビザの外国人を雇用している企業は、以下の点を早急に確認することをお勧めします。

確認項目 確認内容
派遣先の確定状況 申請時点で派遣先が特定されているか。「後日確定予定」の状態での申請は不可
業務内容の整合性 申請書・契約書に記載した業務内容と、派遣先での実際の業務が一致しているか
誓約書の準備 派遣元用・派遣先用の誓約書(参考様式)を入管庁HPから取得し、記載・署名の準備ができているか
管理台帳の整備 更新申請に備え、派遣元管理台帳・派遣先管理台帳・就業状況報告書を日常的に整備・保管しているか
派遣先への説明 派遣先が在留資格の活動範囲を理解しているか。入管調査への対応窓口が設置されているか
報酬の水準 同種業務の日本人従事者の報酬と比較して、同等額以上の報酬が設定されているか

参照:出入国在留管理庁「申請人が派遣形態で就労する場合の取扱いについて」(令和8年2月24日掲載)・労働者派遣法(昭和60年法律第88号)

■ 8. 技人国ビザをお持ちの外国人本人の方へ

企業担当者向けの情報が中心ですが、技人国ビザを保有している外国人の方ご本人にも知っておいていただきたいポイントをまとめます。

1派遣先が変わる場合は注意が必要

派遣形態で就労している場合、派遣先の変更は申請内容と実態の不一致につながる可能性があります。派遣先が変わる際は、必ず派遣元(所属機関)に相談し、入管への対応が適切に行われているか確認してください。

2実際に行っている業務が在留資格の範囲内かどうかを確認する

専門的な業務として申請しているにもかかわらず、実際には単純労働に従事している場合、在留資格の取消し対象となることがあります。「言われた仕事をしているだけ」では法的なリスクを免れません。疑問がある場合は、早めに専門家へ相談することが重要です。

3納税・社会保険の義務を果たしていることが更新審査にも影響する

在留期間の更新審査では、在留資格の業務要件だけでなく、税金・年金・健康保険料の納付状況も確認されます。未納・延滞がある場合は、在留期間が短縮されたり、不許可になるリスクがあります。

参照:出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」・出入国管理及び難民認定法第22条の4(在留資格の取消)

■ まとめ

令和8年3月9日から適用された技人国ビザの派遣形態に関する新しい審査取扱いは、主に4点にまとめられます。

  1. 申請時点で派遣先が確定していなければ許可が受けられない
  2. 在留期間は派遣契約の期間をもとに判断される
  3. 入管が派遣先へ直接確認を行う場合がある
  4. 派遣元・派遣先の双方から誓約書・契約書等の提出が必要になる

これらの変更は、書類上は専門職でありながら実態は単純労働という問題に対応するためのものであり、適正な外国人雇用を進める企業にとっては書類整備の手間が増えるものの、本来の在留資格の活用という観点では正当な方向性です。

早めに体制を整え、申請書類の準備・派遣先への周知を進めることが、不許可リスクの低減につながります。

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この記事を書いた人

行政書士開業準備中 R8夏頃を予定しています。
現在は人材派遣会社で、派遣コーディネーター、人材紹介、新規営業などの業務を行っています。

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